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グランドこそがすべてを出し尽くせる場所。 ラグビーに全力の男の日常が再び動き出す
雄叫びがスタジアムに響いた。劣勢の中でチーム一丸となったトライが決まった瞬間、森山皓太が感情むき出しの声を上げた。中国電力レッドレグリオンズ(以下、中国RR)には、グラウンドで常に全身全霊を捧げる男がいる。
中国RRが本拠地のBalcom BMW Stadiumに九州電力キューデンヴォルテクス(以下、九州KV)を迎えた電力ダービー。試合の立ち上がりから相手の勢いに圧倒され、気づけば31分までに35失点を喫していた。岩戸博和ヘッドコーチが「力の差が出たようなゲーム展開だった」というほど厳しい試合だった。
それでも、34分にスクラムからリズム良くパスをつなぎ、藤井健太郎がボールを持って押し上げる。そこからチーム全員で粘りの攻撃を続け、最後は前半終了間際にモールを押し込んで青木智成のトライにつながった。
その瞬間、森山が雄叫びを上げた。感情を爆発させた大声は、苦しい雰囲気を切り裂くようにスタジアム中に響く。「自分からチームを盛り上げていかないといけないと思っていた」。その情熱はチームを鼓舞し、後半の立て直しへの流れを作った。
持ち味のタックルでも吠えた。68分、溝渕篤司が高く蹴り上げたボールを相手選手がキャッチ。次の瞬間、突っ込んできた森山が「ドスン」という衝突音とともにボールホルダーを押し倒す。観客もどよめく会心の一撃。森山は起き上がりながら、二度叫んだ。
「相手が向かってくる感じとか、相手を倒したときの観客の盛り上がりを感じられて楽しかった。自分が流れを変えてやると思っていたし、流れが変わった瞬間は最高でしたね」
普段は温厚で物腰の柔らかい印象だが、ラグビーになると周りから「リラックスしろ」と言われるほど熱くなる。気持ちいいほどの雄叫びが出るのは、森山にとってグラウンドこそが体力も気力もすべてを出し尽せる場所だからだ。
「ラグビーは唯一自分を表現できる場ですね。僕はもともと人と話すのがすごく苦手だけど、ラグビーだと全身全霊を出せる。僕にとってラグビーは救いの場所なので、このスポーツに出会えて良かったなと思います」
森山はけがの影響で約2カ月ぶりの出場だった。「ラグビーがこんなに楽しいんだって思いながらやっていました」。試合特有の緊迫感の中で、全力で戦い、全力で感情を出す。そんな自分を表現できる日々が再び動き出した。
中国RRは九州KVに21対45で敗れて5連敗となった。次節は今季最後のホストゲームで首位のNTTドコモレッドハリケーンズ大阪を迎える。厳しい戦いは続くが、スタジアムに響く雄叫びがまた中国RRを熱くする。
(湊昂大)
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