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1029日ぶりの公式戦復帰と、出場6分後の負傷。それでも、いまなら前を向ける
中国電力レッドレグリオンズ
火が消えかけていた。「もうラグビーはできないと思った」。中国電力レッドレグリオンズの石渡健吾が負傷離脱していた約3年間を思い返す。
入社1年目の2021年2月27日、試合中に膝を負傷した。その後もさまざまなけがが重なって長期離脱。特にヘルニアによる腰痛に苦しめられ、日常生活や仕事にも支障をきたした。「手術しても良くならなくて、復帰の見込みもつかず、まったく時間が解決してくれなかった」
慣れない社会人生活は続く中、支えのラグビーができなくなり、自分自身を見失っていった。「引退を考えていた時期もあった。仕事が忙しくて練習に行けないときもあったし、自分の時間を作ってラグビーに向き合おうともしていなかった」
石渡の両親は、「私たちは見守っていただけだけど……」と当時を振り返る。「もしかしたらラグビーをやめる決断をするほうが簡単だったのかもしれない。でも、やめないで続ける道を選んだんです」。
苦しい日々の中で意識が変わったきっかけは、仲間の姿だった。「後輩の青木(智成)とか呉山(聖道)とか、みんな頑張っているのに、自分は勝手にナイーブになっていて、ダサいなと思うことがあった。ちゃんとラグビーに向き合っていない自分がダサいなって」。
また石渡のラグビー魂に火が灯った。このオフシーズンの結婚を機に環境も変わり、妻の支えもあって生活リズムが改善。仕事の忙しさも落ち着き、真剣に自分と向き合い始めた。腰の痛みに耐えながら体を鍛え上げると、徐々に状態が上向いた。
11月4日の練習試合で実戦復帰し、2週間後の練習試合では約60分を戦い抜いた。プレーすることでブランクの不安もなくなり、グラウンドにラグビーを楽しむ石渡の姿が戻ってきた。
「明日は体が痛いだろうなとか、ハードなことをしてもけがなく終われて良かったなとか。そんな試合後の独特な感覚をひさびさに味わえて、めっちゃ高ぶりました。(練習試合の)試合後の夜は興奮状態で眠れなかった。『まだラグビーができるんだ』と思って」
12月23日、第2節の清水建設江東ブルーシャークス戦で1029日ぶりの公式戦復帰を果たした。「久しぶりに爆発できる」と石渡は誰にも負けない気合を持ってリスタートを切った。
「この3年間のことを考えすぎるとウルっときちゃうので、あまり考えないようにしている。いろいろ考えちゃうと、胸が詰まっちゃうんで。とりあえず、いまの100%で、いまだけに集中していた」
しかし、試合開始6分、持ち味のタックルを見せた際に左ひざを負傷。テーピングをして試合に戻ったが、万全ではなく、無念の途中交替となった。キックオフから30分後、石渡はひとりベンチで仲間の戦いを見つめていた。「戦術的な交替じゃなかったから申し訳なかった。自分としても不完全燃焼だったのでやるせない気持ちでした」。
実質プレーできたのは20分ほど。それでも、「本当に楽しかった。強い相手に何回かタックルに行って、肌で感じて『いけるな』という感覚もあった」と手ごたえ。ラグビーを続けたからこそ、果敢にタックルしたからこそ得られたものがあった。
復帰戦で新たなけがを負ったが、苦しい時期を乗り越えたいまなら、まっすぐ前を向ける。「復帰の目標も見えているし、次どんなプレーをしてやろうかとも思っているので、全然モチベーションが違う。次はプレーできる自分を80分間見せられるように準備するだけです」。
いまの石渡健吾は以前と違う。魂が燃えている。
(湊昂大)
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